一般社団法人安城青年会議所

第65代 理事長所信

一般社団法人安城青年会議所
第65代理事長 鳥居 将成

はじめに

~Take Action , Time for Change 行動を起こそう、今こそ変革の時だ~
 先人たちの一つの大きな理念をもとに、1959年に178番目の青年会議所として安城青年会議所が設立されました。65年という長い時間を経てもなお、その理念は確かなものとして、時代や環境の変化にも関わらず綿々と受け継がれています。
 私たちの社会はモノがない時代からモノがある時代へと、大きなパラダイムシフトを遂げました。以前は多くの人々に向けて同じ商品やサービスを提供し、品質よりも低価格が選択基準とされ、単純作業のスキルや従順さが求められていました。しかし、今日では持続可能性への配慮とともに、個々の好みやニーズに合わせた商品やサービスが重要視され、変化に対応できる柔軟性や、創造力、問題解決能力を備えた人材が評価されています。
 このような変化の中で、私たちは過去と未来をつなぐ使命を担っています。大切なのは先人たちの具体的な行為そのものを盲目的に受け継ぐのではなく、その行動の背後にある挑戦と変革の精神を理解し、新たな視点から行動を起こすことです。私たちは彼らの想いを継承し、新たな時代に合わせて挑戦と変革を進める役目を担っています。そして、安城青年会議所が65周年という大きな節目を迎える今、私たちはこれまでの歴史を尊重し、同時に未来の可能性を模索しながら、積極的な一歩を踏み出します。

地域社会の持続可能性

 日本は経済大国としての地位を築いてきました。しかし、経済が安定している一方で、食料やエネルギー、資源の自給率は長年低く推移しており、その供給を海外からの輸入に依存しています。特に食料自給率の低さは、国の安全保障や将来の持続可能性の観点から、その脆弱性が深刻な問題として以前から捉えられていました。そして今、国際情勢や為替の変動による仕入れコスト上昇、物価上昇というかたちで顕在化し、私たちの生活に影響を与えています。
 食料自給率を向上させるためには、生産量を増やすだけでは解決しません。消費者の意識や行動が大きく影響します。こうした食料自給率の問題を克服するヒントは、安城市のような地域にこそ存在すると考えます。安城市は、明治30年代中頃には愛知県立農林高校や愛知県農事試験場が開設され、明治用水の恵みを受けながら農都として発展の基盤を築き上げてきました。その結果、安城市は県内で有数の農産物の産出額を誇っています。
 こうした地域の特性や資源を活用しながらブランディングやプロモーションを進めることで、消費者が地域産の農産物を選ぶ動機が強化され、生産者のモチベーション向上や、地域全体の経済活動の活性化にも寄与することが期待されます。私たちが目指すべきは、地域の特性や資源を最大限に活用し、消費者とのつながりを深め、持続可能な食の供給を実現することです。

日本社会の持続可能性

 日本をはじめとする多くの先進国が直面する「人口減少」という課題は食い止めることができるのでしょうか。あるいは、それは人類が進化していく上での自然な摂理なのでしょうか。
 人口減少の背後には、様々な要因が絡み合っています。産業構造の高度化に伴い、大きな家族を持つ必要性が低くなったこと。都市化の進行で、都市部での高い生活費や住宅事情が子育て環境の悪化を招いていること。さらに、女性の社会進出や晩婚化、人々の生活スタイルの多様化といった変化は、家族構成や出生率に影響を与えています。
 これらの要因は、単純に打破することが難しい複雑な問題です。これを自然の摂理として受け止めるのか、それとも対策を講じるべき課題として捉えるのか。どちらの見方も一理ありますが、後者の考え方が多くの国で主流となっています。
 しかし、人口減少そのものを止めることが必ずしも目的ではありません。重要なのは、人口が減少しても社会が円滑に機能し、人々が豊かな生活を送ることができる環境を整えることです。このためには、生産性の向上や技術の革新、そして新たな産業の育成などが必要となります。
 同時に、出生率の低下や子育ての課題は、人口減少とは別の問題として解決を求められるものです。経済的負担、働き方の問題、社会的サポートの不足、出産や育児に関するアンコンシャス・バイアスなどの課題に取り組むことは、単に出生率を向上させるためだけではなく、私たち一人ひとりが人生のあらゆる局面での自由な選択ができる環境を整える取り組みでもあります。

安城青年会議所の持続可能性

 青年会議所の運動や活動は多くのメリットをもたらす一方で、深刻な課題も抱えています。
 まず、青年会議所の大きな魅力として、事業を通じた多岐にわたる経験が挙げられます。事業構築では、個人としての可能性を最大限に試す場を得られるだけでなく、人間関係の構築やコミュニケーション能力の向上、さらにはリーダーシップの育成といった機会が広がっています。具体的には、自らの意見や考えを他者に伝え、彼らの思いや意向を理解し、そしてチーム全体の能力や意見を最大限に活用するための技術や知識が培われます。さらに、これらの活動を通じて、自己の視野が拡大し、地域や他人のために貢献することの大切さや喜びを実感することができます。
 しかし、青年会議所には大きな課題も存在します。その一つが会員の減少です。この課題の背景には、青年会議所の運動や活動やメリットを適切に言語化・伝達することの難しさがあると考えられます。その結果、入会のメリットを十分に感じ取ることができず、また他人への共有も難しくなっています。
 この状況を打破するためには、ブランディングの導入が不可欠です。ブランディングとは単に外見やデザインを洗練させる手法ではなく、組織のアイデンティティや価値を明確にし、それを広めていくことです。安城青年会議所としてのアイデンティティ、つまり「私たち安城青年会議所はこう思われたい」という願いや意識を具体化し、それを外部に向けて伝える取り組みが必要です。そのための手段として、ホームページやSNSを活用し、絶え間ない情報発信を行うことが求められます。
 ただし、ブランディングは容易な取り組みではありません。内容の発信を継続的に行うことは、労力や時間を必要とし、また、発信する内容が組織のアイデンティティと一致しているかの確認も欠かせません。しかし、この取り組みを行わなければ、安城青年会議所の持続的な成長や会員の増加を実現することは困難です。これを通じて、青年会議所が目指す理念や価値を社会に広め、共感していただくことで多くの人々とともに新しい未来を築いていくことが必要です。

結びに

 ~人を信じよ しかし、その百倍も自らを信じよ~
 手塚治虫のこの言葉はとても分かりやすく、自分と他者との関わり方を示しています。この言葉の前提には、他者との関係性を築く際には、確かにその人を信じることが大切だが、それ以上に自分自身の可能性や信念、選択や行動を信じることが重要であるというメッセージが込められています。
 「自らを信じる」の意味とは、自分の選択や行動に対して責任を持つことです。もし他者ばかりを信じてしまうと、問題が起きたときに、簡単に他者のせいにしてしまうかもしれません。しかし、そうすると、自分の成長の機会を逃すことになります。自分の選択や行動を信じることで、挑戦からの学びや、次のステップへの道筋が明確になります。
 この考え方は、青年会議所の活動においても極めて重要です。どんな困難な状況でも、自分の力と仲間の存在を信じて、前向きな一歩を踏み出してください。理事長として、その先頭を常に走り続けることをお約束いたします。